« 798本日のドリンク | トップページ | 今日のアファメーション。 ( メンタルヘルス ) »

2018年8月12日 (日)

殺し屋ファット 11 ( 小説 )

熱中症は軽く考えては危険です。
異変を感じたら、すぐに日陰で休憩。汗を拭いて着替え、水分などをとる。
症状、具体的には、異常な量の汗。頭痛。脚が重い。気力が失せる。
そして思考が、速度制限されたスマホみたいになります。受け答えが調子でない。
実は私も熱中症でした。
今は回復しています。
何十年ぶりで点滴を受けました。これがまあ、効くんだ!
11 殺人公会堂1
「あなたたちが此処に居るという事と、私が狙われている事は、きっと関係あるのかしらね? ドラゴンフライ、また守って下さるの?」
 リカ王女の言葉に、トウは心から感心した。
 会話ではとんぼを立て、視線は程よくトウに向けられ、体は信頼を示す距離をブブに対して崩さない。
 立ち位置は、トウたちがあたりを伺えるように、自ら人の多い方に背を晒している。敵が狙撃手(スナイパー)ならば、一発である。が、それはないとトウは思った。
 この嫋やかすぎる背中を、自分たち殺し屋ごときが、簡単には撃ち抜けない。
 変な言い方だが、それはあまりに惜しい。
 やはりやるなら、接近して身柄を奪い、確かめてみたくなるのではないか。
 ――この気高い王女が、本当に我々と同じなのか。つまり、発汗し排泄し、死に瀕して恐怖におののき、泣き叫ぶのか。
「おい……ドラゴンフライ。二年前はお前に助けられたが、今度はそうはいかない。王女は私が守る。せいぜい邪魔をするな? ところでお前、その目、まさか……」
 小柄な、未だ少女然としたブブ・テンドロスは、やはりとんぼとは深い因縁があるようだ。
「いんや、大丈夫さ。とんぼ(オレ)の狩りは、目に頼るばかりじゃあ、ない。それにねぇ――」
 こいつもいる、と言わんばかりに、とんぼはトウに向いた。
「ふん、新人(ニューフェイス)か。王女の護衛を経験値稼ぎにされてはたまらん。どんなスキルを使うか知らんが、邪魔はするな?」
 随分とんがった(可愛らしい)従者だと、トウは思った。
 そのあと、リカ王女がいくつか他愛もない話をして、二組は別れた。
 たった五分ほどだったが、その濃密さは心地よい疲れを感じさせた。
「あんな良い王女様が、どうして狙われるんでしょうね? とんぼさん?」
「良い王女過ぎるからさ――」
 トウととんぼは、忙しい王女の背を見送った。
 事態が動いたのは、それから半日後、午後七時過ぎ。
 例の号外屋《ニュースマン》からの、メールであった。
 
●S公会堂に《かばん屋》出現。
●ベージュの作業着。かばんは不所持。
●他の殺し屋も複数潜入。《かばん屋》の陽動か。
 S公会堂では、複数の養護施設の児童を集めての、リカ王女の歓迎会が開催される。
 子どもを保護する活動を精力的にこなす王女は、これをとても楽しみにしていた。時間的にも押し詰まり、もうキャンセルは無理だろう。
 だがトウもとんぼも後ろ向きには考えない。これはチャンスである。
「ねえ、とんぼさん? いったいどんな男ですか? かばん屋って」
 S公会堂に向かう車中で、トウが訊ねる。
「ああ、顔なしのことを知ってるのはニュースマンくらいだが、大男だって噂さ。性格はどうかねぇ? 繊細な仕事をしながら、死体をわざわざ晒す。まるでモズのようなヤツだねぇ」
 とんぼは助手席で足を組んでいる。
「そですか。繊細さなら負けません――」
 ハンドルはトウが握っている。流石に配送をしていただけあり、運転は上手い。
「へぇ、ファットちゃん余裕だねぇ? 仕事(ころし)も二度目だと、もうベテランさ。そうそう、ファットちゃんの初仕事。相手の男、《かばん屋》の弟だったらしい」
「…………!?」
 ここで予想だにしない情報が飛び込み、トウは困惑した。《かばん屋》にとっては、自分が怨嗟対象なのだろうか。無論、そんなこと知った事ではないが――。
「それを聞いて気持ちが固まりました。とんぼさんにも、ブブさんにも譲りません。《かばん屋》は僕が始末します!」
「そうかぃ」
 とんぼが少し楽しそうに笑った。やがて車はS公会堂の地下駐車場に入っていく。
つづく

« 798本日のドリンク | トップページ | 今日のアファメーション。 ( メンタルヘルス ) »